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 1.小児脳腫瘍とは
 2.症状
  1. 頭蓋内圧亢進症状
  2. 局所症状
 3.診断
 4.小児脳腫瘍の種類
  1. 髄芽腫
  2. 星細胞腫(幼若性毛髪様星細胞腫)
  3. 上衣腫
  4. 頭蓋咽頭腫
  5. 胚細胞腫瘍
  6. 視神経膠腫
  7. 脈絡叢(みゃくらくそう)乳頭腫
  8. 脳幹部神経膠腫

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脳腫瘍(小児)のうしゅよう(しょうに)

1.小児脳腫瘍とは

子供(小児)の脳腫瘍は、大人(成人)の脳腫瘍と比べ、腫瘍の種類、好発部位が異なるため、多くはその症状の経過も成人の場合と異なります。成人では大半の脳腫瘍が大脳に発生し、その発生部位により手や足が利かなくなったり(運動麻痺)、しびれがあったり(知覚障害)、言葉がうまく出なくなったり(言語障害)します。小児の脳腫瘍は、半数近くが小脳や脳幹などに存在することから、脳の水(脳脊髄液)の通過障害により水頭症をおこしやすいことになります。しかしながら、脳内に水の貯留があっても、子供は骨の縫合線が離開しやすいため、頭の中の圧(頭蓋内圧)の上昇があまりみられず、単に不機嫌であったり、軽い歩行障害を示す以外に症状がみられないこともあります。

最も多い小児脳腫瘍は、小脳にできる良性の星細胞腫(せいさいぼうしゅ)で約20%を占めます。その他、悪性の髄芽腫(ずいがしゅ)が12%、胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)が10%、先天性の腫瘍で頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)という良性腫瘍が9%、上衣腫(じょういしゅ)が5%となっています。

2.症状

脳腫瘍の症状は、頭蓋骨という限られた空間の中に腫瘍ができたり、脳の水がたまったりしておこる頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)と、腫瘍によりその部位の脳の機能が障害されておこる局所症状に分けられます。
1)頭蓋内圧亢進症状
小児脳腫瘍は成人に比べ、小脳や脳幹のある後頭蓋窩と呼ばれる狭い空間にできることが多く、脳の水(脳脊髄液)の通路が閉塞しやすく、頭に水がたまり水頭症をおこします。その結果、頭蓋内圧が高くなり、乳幼児であれば頭囲が拡大します。また、大脳の腫瘍でも大きくなれば頭蓋内圧が高まります。成人では、頭痛・嘔気・嘔吐がその症状としてあらわれますが、小児では、単に食欲が低下したり、突然嘔吐したり、また不機嫌であったりするだけのこともあります。
2)局所症状
脳腫瘍のできた部位により、その領域の神経細胞が障害を受け、特徴的な症状が出現します。例えば、前頭葉の後部には運動野と呼ばれる運動神経の集まっている領域があり、その障害により反対側の手足の麻痺が出現します。また、右利きの人では左前頭葉の側方に言語中枢があり、その障害により話をすることが不自由になります。後頭葉の障害では視野の狭窄(きょうさく)がおこります。小脳が障害された時には、歩行時のふらつきが出たり、姿勢の保持が困難になったりします。しかしながら、小児ではいずれも成人ほど典型的な症状を示さないことも多いので注意が必要です。

3.診断


CTおよびMRI検査で、ほとんどの腫瘍が安全にかつ正確に診断可能です。CTはX線を用い、MRIは磁気を用いて、コンピュータで処理を行って断層画像をつくります。腫瘍の位置、正常組織との関係、造影剤の投与前後での変化などから、腫瘍の位置、拡がりだけでなく、細かい組織診断まで推察できます。脳血管撮影は、かつては診断のために必要でしたが、最近では手術を前提にした場合や血管性病変の疑われる場合を除いて行われることが少なくなってきました。MRIやCTを用いた血管撮影(MRA、ヘリカルCT)の精度もよくなり、今後はさらに少なくなると思われます。

4.小児脳腫瘍の種類

代表的な小児脳腫瘍について、それぞれの特徴を述べます。
1)髄芽腫
最も悪性度の高い腫瘍のひとつですが、放射線療法や化学療法の効果が高いため、適切な治療によって長期生存が得られるようになりました。最近では50〜60%以上の5年生存率が報告されるようになってきました。好発年齢は5〜14歳で、小児脳腫瘍の13%を占めます。多くは小脳正中部に発生し、周囲の小脳組織に浸潤性(しんじゅんせい:周囲の組織を侵して拡がる)に進行します。小脳症状として歩行障害や姿勢維持の障害が出現し、足を左右に開いての歩行が特徴的です。また、脳脊髄液の通過障害に伴う水頭症により、頭蓋内圧が亢進し、頭痛や嘔気を訴えたり、突然嘔吐したりします。しかし、水頭症があっても骨縫合線の離開により頭蓋内圧が緩和され症状が出にくいこともあります。

診断は、CTやMRIが用いられます。大半は小脳正中部を中心に造影剤により一様に白く染まる円形の画像を示します。ときに、この腫瘍は髄液を介して脳室壁や脊髄腔に播種(はしゅ:種をまいたように拡がる)するため、たとえ症状がなくても脳内の検査だけでなくMRIによる脊髄の検査も必要です。

治療は、手術および放射線療法が主体です。放射線療法が有効な腫瘍ですが、十分に摘出を行った後に放射線療法を行うとさらに効果的であるとされています。放射線療法は全脳に照射を行った後、小脳の病変部に追加照射します。さらに脊髄全体にも行います。また、放射線照射中や照射後に化学療法剤を併用するほうが予後がよいと考えられています。

治療に伴う副作用で最も問題になるのは、放射線照射によるものです。早期には全脊髄に対する照射による骨髄抑制(骨髄で白血球や血小板を造る機能が低下すること)であり、特に化学療法剤を併用した場合には白血球減少による感染に対する抵抗力の低下、血小板減少による出血傾向に注意が必要です。また、治療後数年たってからの障害としては、全脳照射による知能の発育障害があるため、3歳未満の場合には、術後の放射線照射の代わりに化学療法を第一選択とする傾向にあります。

髄芽腫と関連し、原始神経外胚芽葉性腫瘍(PNET)と呼ばれる腫瘍群があります。これは中枢神経系に発生する髄芽腫と鑑別が困難な未分化な腫瘍の総称であり、グリア細胞、神経細胞、上衣細胞などへの分化を示すものも認められます。腫瘍の性状や治療に対する反応は髄芽腫と似ています。
2)星細胞腫(幼若性毛髪様星細胞腫:ようじゃくせいもうはつようせいさいぼうしゅ)
5〜14歳の小児に多い腫瘍で、小脳に好発する腫瘍です。髄芽腫と同様に小児脳腫瘍の中で大変頻度の高い腫瘍ですが、極めて良性で摘出手術を行えば完治し、5年生存率は80%以上といわれています。小脳半球に多く発生しますが、正中部にも珍しくありません。小脳失調により左右に足を開いて歩行し、ふらつきが強くなります。第4脳室や中脳水道などの脳脊髄液の通路を圧迫し、水頭症をおこしますが、骨縫合線の離開などにより頭蓋内圧亢進が緩和され、頭痛や嘔気を初期には訴えないことも珍しくありません。

診断には、CT、MRIが用いられます。この腫瘍は嚢胞(のうほう:腫瘍内の水の袋)を形成することが多く、小脳内に黒い円形の画像として認められます。腫瘍本体は、この嚢胞の壁の一部が肥厚する形で結節状に存在し、壁在結節と呼ばれ、造影剤により白く描出されます。壁在結節と周囲の小脳との境界は鮮明で、手術でこれを完全に摘出すれば嚢胞壁の一部を残しても腫瘍の再発はないとされています。小児に発生する小脳の星細胞腫の多くは、このように摘出可能な良性腫瘍ですが、成人に発生する星細胞腫のように浸潤性に進行するものも一部あり、病理学的な悪性度に応じて術後に放射線療法を行う場合もあります。
3)上衣腫
5〜9歳に好発する腫瘍で、小児脳腫瘍の約5%を占め、乳幼児に限れば20%に至るといわれています。脳室壁を構成する上衣細胞から発生するため、第4脳室、側脳室、第3脳室に接して存在し、脊髄腫瘍としても高頻度にみられます。腫瘍は周囲の脳組織を圧排する形で進行するため、腫瘍と脳との境界は比較的鮮明です。進行が緩徐ですから、かなり大きくなるまで何ら症状を示さないことも多く、脳脊髄液の通過障害による急激な水頭症で発症することも少なくありません。側脳室壁から大脳実質内に進展した場合は、片麻痺や視野障害などの症状があらわれます。また、第4脳室から舌状に頸髄方向へ進展し、頸部の硬直や運動制限が出現することもあります。

石灰化を伴う場合には、CTでは白く、MRIでは黒く抜けて映ります。造影剤を用いると均一あるいは不規則に増強され、内部に円形の嚢胞が認められることもあります。

手術で全摘(全部の腫瘍の摘出)が可能であれば治癒しますが、大脳や小脳深部に存在し、全摘手術のできない場合は、放射線療法を併用します。一般に予後は良好で、5年生存率は60%程度ですが、ときに脳脊髄液を介して播種性に転移をすることがあります。
4)頭蓋咽頭腫
脳下垂体上部に発生する良性腫瘍で、小児脳腫瘍の9%を占め、5〜9歳に好発します。脳下垂体を圧排することにより、成長ホルモンの分泌障害から身体の発育不全をおこし、皮膚は色白できめ細かく、体毛は少なくなります。腫瘍が視神経の交叉部を圧迫すれば、両眼ともに外側の視野が狭窄しますが、下垂体腺腫の時ほど明確な半盲にはならず、やや不規則な視野障害になります。さらに腫瘍が大きくなると脳脊髄液の通過障害がおこり水頭症となります。

頭蓋骨単純X線撮影では、トルコ鞍は皿状に扁平化し、その上部に不規則な石灰化陰影を認めます。CTでは結節状の石灰化がより明らかに認められ、腫瘍部分が造影剤により強く増強されます。一部嚢胞を形成することも珍しくありません。MRIにより、いっそう腫瘍の進展程度が明確に描出されます。

良性腫瘍であるため、手術で全摘できれば治癒可能ですが、視床下部との癒着が強く、ときには全摘手術が困難な場合があります。無理に全摘手術を試みれば、術後に尿崩症と呼ばれる多尿、多飲がおこるのみならず意識が障害されることもあるので注意が必要です。全摘手術ができなかった場合には、術後に放射線療法を行います。5年生存率は95%程度です。
5)胚細胞腫瘍
松果体(しょうかたい)およびトルコ鞍上部に発生する胎児の時の胚細胞と呼ばれる細胞由来の腫瘍で、10〜19歳に好発し、小児脳腫瘍の約10%を占めます。松果体に発生した場合は、早期より中脳水道の閉塞により水頭症となり、頭蓋内圧亢進症状がおこる他、上方を見にくくなるのが特徴的な症状のひとつです。さらに腫瘍が大きくなれば、ふらつきや聴力障害がおきます。トルコ鞍上部に腫瘍が発生すると、まず尿量が増えたり、視野が狭くなります。胚細胞腫瘍は病理学的に次の5種類に分類されています。浸潤性に進行しますが、放射線の治療効果が高い胚芽腫(精上皮腫)、極めて悪性度が高く治療の困難な絨毛がん、胎性がん、卵黄嚢腫瘍、そして良性の奇形腫です。CT、MRIでは、胚芽腫は正常脳よりやや白く描出され、造影剤により一様に増強されます。奇形腫や胎性がんではより不均一に増強されることが多いようです。また、絨毛がんでは血液中、髄液中のHCG(絨毛上皮由来のホルモン)、卵黄嚢腫瘍ではAFP(胎児性タンパク)が高値を示します。このようにCT、MRIによる画像診断、腫瘍マーカーの検査は鑑別に有用です。

胚芽腫に対する治療は放射線療法が主体です。腫瘍のできている場所や大きさにもよりますが、最初に診断の意味も兼ねて20Gy程度の照射を行い、腫瘍の縮小の度合によって診断を決めて治療することもあります。放射線療法に対する反応がよくなければ、胚芽腫以外の腫瘍を考えて手術を行い、絨毛がんや胎性がん、卵黄嚢腫瘍では化学療法を併用します。しかしながら、厳密には病理診断が確定してから放射線照射を行うのが原則であり、最近では手術をまず行ってから治療を進めるようになっています。また、放射線の照射に伴う知能の発達不全やホルモンの分泌障害を減らす目的で、最近では手術による組織診断後、まず化学療法を行い、放射線の照射量を減らそうという試みもあります。
6)視神経膠腫
3〜7歳児の視神経に好発する良性腫瘍のひとつです。眼窩(がんか)内に発生して一側の視力障害をおこすものから、脳内の視交叉部というところにできて、両側の視力視野の異常をおこすものまで、発生部位により症状はさまざまです。増殖の速度が大変遅いため、発症時にはかなりの大きさになっていることもあります。眼窩内で増大すれば眼球が突出し、頭蓋内で大きくなれば、脳脊髄液の通過障害により水頭症となります。また、この疾患はレックリングハウゼン病と呼ばれる全身の骨の軟化や変形、皮下腫瘍(神経線維腫)、皮膚の褐色色素斑(cafe au lait spot)、高カルシウム血症などを特徴とする遺伝性疾患との合併が多いとされています。診断は、頭部レントゲン撮影やCT、MRIで腫大した視神経を確認します。手術で全摘が可能であれば、極めて予後がよいのですが、病変が視交叉部に拡がり、摘出を行えば両眼ともに失明するような場合は、手術により診断をつけ、放射線療法や化学療法を主体として行います。
7)脈絡叢(みゃくらくそう)乳頭腫
5歳以下、特に乳幼児に好発する比較的予後の良好な腫瘍で、小児脳腫瘍の1.6%を占めます。この腫瘍の特徴は脳脊髄液の過剰産生を伴うことで、症状の大半は頭囲拡大、嘔吐など水頭症によるものです。脳内で脈絡叢と呼ばれる血管に富んだ組織から発生するため、脈絡叢の発達した側脳室や第4脳室に好発します。造影剤を用いたCTやMRIでは、脳室内にカリフラワー状に白く描出されます。増殖の遅い腫瘍であり、治療の原則は手術での摘出です。放射線治療効果は低いといわれていますが、残存腫瘍がある時は放射線療法も行われています。ときに髄液を介して播種することがありますので、術後の経時的な検査も重要です。
8)脳幹部神経膠腫
小児および若年者に発生する腫瘍で、予後不良の疾患です。脳幹部は大脳からの神経線維が集中して走る部位であるために、四肢の運動神経麻痺ばかりでなく、顔面神経麻痺、眼球運動障害などの脳神経症状も伴います。特徴として手足の麻痺と反対側の脳神経麻痺が出現します。CTおよびMRIでは腫大した脳幹部を認め、その一部あるいは全体が造影剤にて白く増強されます。手術で摘出できない部位であるために、手術の目的は診断の決定あるいは一部の摘出にとどめ、放射線療法が行われます。照射により一時的な腫瘍の縮小効果は得られますが、治療効果は極めて不良で、1年生存率は50%程度です。
情報掲載内容について
情報提供:国立がんセンター 情報委員会
URL 〔 http://www.ncc.go.jp/jp/index.html 〕
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