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 1.軟部肉腫(成人)とは
 2.症状
 3.診断
 4.病期(ステージ)
I期 II期 III期 IVa期 IVb期
 5.治療
  1. 外科療法
  2. 化学療法
  3. 放射線療法
  4. 温熱療法
 6.病期(ステージ)別治療
I期 II期 III期 IVa期 IVb期

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軟部肉腫(成人)なんぶにくしゅ(せいじん)

1.軟部肉腫(成人)とは

成人の軟部肉腫(あるいは悪性軟部腫瘍)とは、身体の軟部組織から発生した悪性の腫瘍です。軟部組織あるいは軟部は、身体の肺や肝臓などの実質臓器と支柱である骨や皮膚を除いた筋肉、結合組織(腱)、脂肪、血管、リンパ管、関節、神経を含んでいます。この腫瘍は、四肢、体幹、後腹膜、頭頸部など身体のいろいろな部位に発生します。

わが国での発生率は10万人に2人くらいで、国立がんセンター中央病院で治療した軟部肉腫は過去20年間で243例とまれな腫瘍です。軟部肉腫の種類は多く、30種類以上あります。頻度の高い順に悪性線維性組織球腫(せんいせいそしききゅうしゅ)、脂肪肉腫、横紋筋肉腫(おうもんきんにくしゅ)、平滑筋肉腫(へいかつきんにくしゅ)、滑膜肉腫(かつまくにくしゅ)、線維肉腫(せんいにくしゅ)、悪性神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)、血管肉腫などがあります(詳しくは「軟部肉腫(小児)」の項を参照して下さい)。

好発年齢は、悪性線維性組織球腫と平滑筋肉腫は高齢者に、脂肪肉腫と線維肉腫は多少中年に傾き、滑膜肉腫と悪性神経鞘腫は若年者に多いようです。横紋筋肉腫は小児の軟部肉腫の大部分を占めています。男女別では、男女同数または男性にやや多い腫瘍が多数を占めていますが、平滑筋肉腫、滑膜肉腫などは女性に多いようです。

肉腫の種類により発生部位に違いがみられます。脂肪肉腫と悪性線維性組織球腫は特に大腿に多く、滑膜肉腫は大きな関節の近くに発生します。平滑筋肉腫は後腹膜や腸間膜に発生することが圧倒的に多く、横紋筋肉腫は頭頸部や膀胱の周囲に多く発生します。線維肉腫はいろいろな部位に発生しますが、比較的体幹に多くみられます。

軟部肉腫は難治性の腫瘍のひとつであり、最初の治療の成否により、その人の予後(治療による今後の見通し)に大きな差が出てきます。したがって、軟部肉腫の治療は早期発見とともに、必ず専門家のいる病院で治療することが大切です。軟部肉腫は種類が多く、確実な診断をするためには腫瘍の一部をとり(生検)、病理組織学的に診断します。この生検は、その後の治療をするにあたって非常に大切な検査で、やはり専門的知識を必要とします。治療としては悪性度の高い肉腫は手術だけではなく、化学療法や放射線療法、さらには温熱療法など、さまざまな治療を組み合わせたりして治療(集学的治療)を行います。

2.症状

軟部肉腫の大部分は、皮下や筋肉の中にこぶのようなものができてきます。症状としては痛みのないしこり(腫瘤:しゅりゅう)やはれ(腫脹:しゅちょう)ですが、痛みがないため放置されていることも多く、大きな腫瘤になって受診されることもあります。また、大腿など筋肉の厚い場所で、骨に近く深い部分に発生すると、腫瘤を触れることが難しく、大腿全体が大きくはれたようになっていることもあります。また、手足では腫瘍が大きくなると、はれてきて関節が曲がらなくなったり、座れなくなったりすることもあります。一部には腫瘤自体に痛みがあったり、腫瘤が大きくなり神経を圧迫して痛みを伴うこともあります。また、皮膚に色がついたり、潰瘍(かいよう)ができることもあります。

3.診断

まず視診と触診を行います。皮膚に治りにくい潰瘍ができている場合、悪性の疑いもあります。また、腫瘍が深い場所に発生し、かたいものは悪性の可能性があります。特に大きさが5cmを超える腫瘍は注意が必要です。悪性の疑いがある場合は、針を刺して組織の一部をとり出して調べることもあります(針生検)。外来で簡単に行える検査ですが、針を刺す位置の問題や、刺した後に出血し病巣が拡がってしまうこともあるので、やはり専門家に任せることが大切です。悪性の疑いが強い場合は、腫瘍の性質や拡がりを調べるため、CT、MRI、超音波や血管造影などの検査を行います。これらの検査により腫瘍の形や拡がりを詳細に立体的につかむことができます。

また、軟部肉腫には転移しやすいという特徴があります。転移の大部分は肺で、肉腫によってはリンパ節におこります。転移を調べるために肺の断層撮影やCTを、リンパ節転移やその他の転移を調べるためにはアイソトープを使った腫瘍シンチグラフィー(RI)などの検査を行います。それと同時に1cm角の組織をとって(切開生検)病理組織学的に調べ、腫瘍の種類を判断します。画像診断や病理組織学的検査は非常に大切で、これからの治療方針を決定したり、予後を判断します。

4.病期(ステージ)

軟部肉腫の進行度は、病理組織学的な腫瘍細胞の悪性度と転移の有無により4期に分けられます。この病期をもとに、年齢や全身状態を考えて最も有効な治療法を決定します。
I期
病理組織学的に腫瘍の細胞が正常細胞に似ているもので(高分化)、腫瘍の大きさは5cm以下あるいは超えるものも含み、リンパ節転移や血行性転移のないもの。
II期
病理組織学的に腫瘍の細胞が正常細胞といくらか違いのあるもので(中分化)、腫瘍の大きさは5cm以下あるいは超えるものも含み、リンパ節転移や血行性転移のないもの。
III期
病理組織学的に腫瘍の細胞が正常細胞から非常に違っているもので(低分化/未分化)、腫瘍の大きさは5cm以下あるいは超えるものも含み、リンパ節転移や血行性転移のないもの。
IVa期
血行性転移はなく、腫瘍の領域のリンパ節に転移しているもの。
IVb期
肺などの血行性転移をしているもの。

5.治療

治療には外科療法、化学療法、放射線療法、温熱療法、免疫療法などがあります。外科療法、放射線療法、温熱療法は局所の治療で、化学療法と免疫療法は全身的な治療です。転移があったり、転移が疑われる場合や、悪性度の高い腫瘍では全身的な治療が必要です(当院では軟部肉腫に対して免疫療法は行っていません)。現在の軟部肉腫治療の主体は外科療法です。しかし、悪性度の高い腫瘍では、いろいろな治療を組み合わせて治療を行うことが大切です。
1)外科療法
腫瘍が発生した局所にとどまっている場合、その局所の腫瘍を除去することができるのは外科療法です。局所再発をしない手術を行うためには、腫瘍の性質をよく知って手術を行うことが大切です。腫瘍は徐々に成長する時に、腫瘍の周囲に反応層といわれる膜のようなものをつくります。一見、この膜は腫瘍とは関係ないようにみえますが、この反応層の中にはすでに腫瘍細胞が入り込んでいます。したがって、反応層で切除すれば必ず再発します。正しい切除法は、反応層の外側で周囲の正常組織を十分含めて切除することです(治癒的切除)。近年、腫瘍を大きく切除した後、再建として別の部位の皮膚、筋肉、骨などを切除部位にもってきて顕微鏡下で血管をつないだり、人工血管を移植したりする技術が進歩してきました。そのため、以前であれば手術で切断するしかなかったのですが、手足を残し機能を温存できるようになってきました(患肢温存療法)。当院での患肢温存率は90%以上です。しかし、腫瘍が大きくなり血管や神経が侵され、切・離断になることもあります(詳しくは「上肢切断・離断後のリハビリテーション」、「下肢切断・離断後のリハビリテーション」の項を参照して下さい)。リンパ節転移が疑われる場合は、リンパ節郭清(かくせい)と呼ばれるリンパ節の切除を行います。
2)化学療法
抗がん剤を用いて腫瘍細胞を死滅させる方法を化学療法といいます。静脈から点滴で抗がん剤を注入し、血流に乗って全身に行き渡り腫瘍細胞を死滅させます(全身投与)。また、腫瘍に血液を送っている動脈に抗がん剤を注入し、局所の腫瘍を死滅させる方法もあります(動脈内投与)。腫瘍によっては、いろいろな検査を行っても発見できない小さな転移(微小転移)が考えられることもあります。全身投与はこのような微小転移を治療するため、術前、術後に行います。当然、手術前に行えば局所の腫瘍を小さくすることもできますし、術後に行えば局所再発の防止にもなります。また、抗がん剤の効果が高い腫瘍では、肺転移巣やその他の転移巣の治療に、あるいは手術不能の場合にも行います。通常、全身投与は数種類の抗がん剤を併用して投与します。従来、化学療法は副作用が強く、つらい治療のひとつでしたが、最近は副作用を軽減する新しい薬剤や、いろいろな支援療法が行われています。
3)放射線療法
腫瘍細胞を死滅させたり、腫瘍を小さくするために行います。しかし、軟部肉腫は放射線療法が比較的効きにくいものが多く、放射線療法を第一に選択することはあまりありません。手術不能の場合や、手術前に放射線療法を行って腫瘍をできるだけ小さくして手術で切除しやすくする場合や、手術後に腫瘍のとり残しが考えられる場合などに行います。通常、身体の外から照射する外部照射が行われています。再発腫瘍や不十分な手術後では、腫瘍細胞が拡く散らばっていることも多く、再手術を行っても腫瘍細胞をとり残す場合が多いと考えられます。この場合、再発予防のために手術で切除した後、腫瘍細胞が散らばっていると考えられる範囲に小さいチューブを多数置いてきて、手術後にこのチューブの中に放射線線源であるイリジウムを入れて小線源療法を行うこともあります。その他、腫瘍を切除後、手術中に照射する術中照射があります。
4)温熱療法
腫瘍細胞は43℃以上に温められると死滅することがわかっています。軟部肉腫は深部の内臓とは違い、比較的表層にあるので、温めることは容易です。腫瘍に向かって電磁波を当てることによって温めますが、通常は放射線療法や化学療法を併用して治療効果を高めています。できるだけ腫瘍を小さくして手術で切除しやすくしたり、手術不能の場合に行います。

6.病期(ステージ)別治療

I期
血行性転移の危険性は少なく、外科療法が基本で治癒的切除が必要です。不十分な手術であれば放射線療法を追加します。切除不能であれば放射線療法を行います。
II期
血行性転移の危険性が少しあり、外科療法が基本で治癒的切除が必要です。不十分な手術であれば放射線療法を追加します。切除不能であれば放射線療法を行います。場合によっては化学療法を追加します。
III期
血行性転移の危険性が高く、外科療法が基本で治癒的切除が必要です。不十分な手術であれば放射線療法を追加します。切除不能であれば放射線療法を行います。さらに化学療法を追加します。
IVa期
原発巣は治癒的切除が必要で、リンパ節郭清を行います。不十分な手術であれば放射線療法を追加します。
IVb期
原発巣は治癒的切除が必要です。不十分な手術であれば放射線療法を追加します。さらに化学療法を追加します。

7.生存率

5年生存率をみると、腫瘍別には粘液型悪性線維性組織球腫92%、花むしろ多形型悪性線維性組織球腫46%、粘液型脂肪肉腫85%、高分化型脂肪肉腫100%、滑膜肉腫71%、悪性神経鞘腫38.9%、横紋筋肉腫40%、その他76.7%でした。腫瘍の種類とは別に悪性度によって予後は大きく異なります。悪性度が低いほうから低、中、高に分けると、低悪性度では86.7%、中悪性度では69.4%、高悪性度では34.2%でした。
情報掲載内容について
情報提供:国立がんセンター 情報委員会
URL 〔 http://www.ncc.go.jp/jp/index.html 〕
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