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| 胃下垂体腺種:かうしたいせんしゅ |
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1.下垂体腺腫とは
下垂体腺腫とは、脳下垂体にできる脳腫瘍の一種です。脳下垂体は頭蓋骨の底部・中心部にあるトルコ鞍という窪みの中にある豆粒大ほどのものです。脳下垂体の上方には、ものを見るために必要な視神経が左右の眼球へ延びていき交叉しています。また、脳下垂体の横には、脳に血液を送る重要な血管(内頸動脈)や眼球を動かす神経が通っています。脳下垂体はその大部分を占める前葉と小さな後葉の2部に分かれており、全身のホルモンの中枢として多くのホルモンを分泌しています。 前葉から分泌されるホルモンの中で重要なものは次の5つです。
前葉から分泌されるホルモンの中で重要なものは次の5つです。
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1. 成長ホルモン
小児期から思春期にかけて、手足や内臓の成長を促します。
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2. プロラクチン
出産後に乳汁を分泌させる働きをします。このホルモンが多量分泌されている間は月経は止っています。
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3. 甲状腺刺激ホルモン
甲状腺に命令をして甲状腺ホルモンを分泌させる働きをします。男女とも生涯必要です。
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4. 副腎皮質刺激ホルモン
副腎に命令をして副腎皮質ホルモンを分泌させる働きをします。男女とも生涯必要です。
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5. 性腺刺激ホルモン
卵胞刺激ホルモンと黄体刺激ホルモンの2種類があります。男性では睾丸を女性では卵巣を支配し、それぞれの性ホルモンの分泌を促します。また精子や卵子の正常な発育にも重要なホルモンです。
後葉からのホルモンは次の2つです。
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1. 抗利尿ホルモン
腎臓に働きかけて尿量を少なくする働きをし、男女とも生涯必要です。
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2. 子宮収縮ホルモン
分娩時に子宮を収縮させます。
ほとんどの下垂体腺腫は良性で増殖速度は遅く、脳以外の他臓器に転移することは極めてまれです。20〜50歳の成人に多く発生し、脳腫瘍全体の約15%を占めます。脳下垂体の存在するトルコ鞍付近には、いくつか別の腫瘍、例えば頭蓋咽頭腫などができますが、それらは「脳腫瘍(成人)」あるいは「脳腫瘍(小児)」の項を参照して下さい。
下垂体腺腫には、ホルモンを異常に多く分泌するもの(ホルモン産生型の腺腫)と、ホルモンを分泌しないもの(ホルモン非分泌性腺腫)とがあります。ホルモン産生型の腺腫では、産生するホルモンの種類によりさまざまな身体の異常があらわれますが、ホルモン非分泌性腺腫の場合は、かなり腫瘍が大きくなるまで無症状のためになかなか発見されないこともあります。
多くのがんの場合と同様に、下垂体腺腫も小さい間に発見されると手術を主体とした治療で完全に治療できる確率が高くなります。腫瘍が大きくなったり、周辺の大切な脳組織・脳神経・脳血管などを巻き込むようになってきますと、手術で完全にとりきることは難しくなり、手術後に放射線療法や薬物による治療が行われることもあります。また、ある種のホルモン産生型腺腫では、薬物治療がまず試されることもあります。腫瘍が大きくなり、正常の脳下垂体が腫瘍により圧迫されてきますと、身体に必要なホルモンが不足してくることも多く、この場合は不足しているホルモンの補充療法が必要となります。
2.症状
下垂体腺腫による症状には、大きく分けてホルモンが過剰に分泌されることによるホルモン異常症候群と、腫瘍が大きくなることによる局所の圧迫症状とがあります。
ホルモン産生型腺腫は、産生されるホルモンの種類によって分類されています。以下にそれぞれについて症状を述べます。
1)プロラクチン産生腺腫
下垂体腺腫の約4割を占め、女性に圧倒的に多くみられる腫瘍です。女性では無月経と乳汁分泌がみられます。男性の場合は、性欲低下やインポテンツがみられます。大きくなると視野障害が出現することもあります。女性のほうが早期に発見されやすく、1cm以下の小さな腫瘍のことも多く、女性不妊症の原因のひとつとされています。
2)成長ホルモン産生腫瘍
腺腫の約2割を占め、男性にやや多くみられます。思春期に発症した場合は巨人症になりますが、これは比較的まれです。多くは成人に発症して手足の先端、額、あご、唇、舌などが肥大してきて末端肥大症となります。そのため、指輪や靴のサイズが合わなくなったり、数年のうちに顔つきが変わってきたりします。成長ホルモンの異常分泌が長期間続くと、糖尿病とそれに伴う高血圧などの血管病変を合併しやすくなります。
3)副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫
全下垂体腫瘍の数%にしかみられないまれな腫瘍で、若年から中年の女性に多く、クッシング病と呼ばれています。90%以上に肥満がみられ、特に顔は満月様に丸くなり、手足に比べて胸・腹が太る中心性肥満が特徴です。ニキビが出やすく、体毛が濃くなり、下腹部に青紫色のすじがみられます。また、高い割合で高血圧や糖尿病を合併し、精神症状が出ることもあります。
腫瘍が大きくなるためおこる圧迫症状には次のものがあります。
1)下垂体ホルモン産生障害(汎下垂体機能不全)
女性では無月経ないし不規則月経、男性ではインポテンツや性欲が低下し、体毛も薄くなります。また、疲れやすくスタミナ不足となります。さらに、強い肉体的ショックが生じた際にショック状態からなかなか回復できないこともあります。抗利尿ホルモンが不足すると、薄い尿が多量に出る症状(尿崩症)がおきます。
2)視力・視野の障害
腫瘍が上方に拡大してきますと、直上にある視神経交叉部を圧迫しはじめます。まず、両目の上外側から見えにくくなってきます。さらに進行すると両目の外側半分が見えなくなってきて、両耳側半盲と呼ばれる典型的な症状となります。
3)頭痛
頭痛もしばしば認められます。
3.診断
下垂体腺腫の診断には、主にレントゲンなどによる画像診断と内分泌学的検査(ホルモン検査)とがあります。
1)画像診断
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(1)MRI
磁気共鳴法という強力な磁場を用いた検査で、頭蓋骨の影響がなく脳あるいは腫瘍のみを映し出すことができ、また自由な断層面の画像も得られます。脳や下垂体周辺の構造が細部にわたり観察でき、腫瘍の正確な大きさや拡がりを知ることができます。また、重要な血管の走行も描出することができるため、現在最も有用な画像診断法といえます。
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(2)CT
X線とコンピューターを用いた断層撮影で、最も一般的な診断法です。造影剤の併用により、小さな腺腫の診断も可能となる場合も多く、また腺腫周囲の骨の状態を調べることができる点などの優れた特性をもっています。
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(3)頭部のレントゲン検査
トルコ鞍の変形・破壊などの骨変化を調べます。
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(4)脳血管撮影
下垂体のすぐ両側には脳に栄養を送る重要な内頸動脈が走行しており、この動脈の走行異常や奇形がないかどうかを術前に調べておくことが大切です。大腿部の動脈から細い管を脳の血管に進めて行われます。
2)ホルモン検査
ホルモン検査には、腺腫によって過剰に分泌されたホルモンを調べる意味と、逆に分泌が低下した状態のホルモンを調べる意味とがあり、主に静脈からの採血で行います。
ホルモン産生腺腫の場合は、そのホルモン(プロラクチン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンなど)の血中濃度が異常高値を示し、直接診断につながります。さまざまな刺激テストや抑制テストを行い、その分泌動態を調べることがあります。
一方、分泌の低下しているホルモンに対しては、そのホルモンの分泌刺激テストを行います。ふつう各分泌刺激ホルモン製剤を注射した後、15〜30分ごとに連続採血して目的のホルモンの血中濃度の変化を調べます。
3)眼科の検査
視力、視野、眼底の精密検査を行います。
4)耳鼻科の検査
以下に述べる経鼻的手術を予定している場合、鼻腔内や副鼻腔内に炎症や異常がないかを調べておきます。
4.治療
下垂体腺腫の治療には、外科療法、放射線療法、および化学療法の3通りの治療法があり、それぞれの腫瘍のタイプや大きさ、症状、年齢などにより治療法や組み合わせが決められます。
1)外科療法
経鼻的手術と開頭手術の2つの方法があり、腺腫の進展方向や大きさなどのさまざまな条件で選択されます。術後、多くの場合はホルモン補充療法が必要になります。
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(1)経鼻的手術
上の前歯のつけ根の口腔粘膜を切開し、鼻腔の裏側の副鼻腔を経て脳下垂体の直下に到達します。薄い骨と硬い膜を切開し、正常の脳下垂体を残しながら下垂体腺腫を除去します。
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(2)開頭手術
額の髪の生え際の皮膚を切開して骨に窓を開け、脳をおおっている硬膜を切開し、脳を特殊なへらで持ち上げて下垂体部に到達します。周囲にある視神経や内頸動脈などの正常組織の間から腫瘍を摘出します。
2)放射線療法
通常、手術などと併用して、手術後に残存した腫瘍に対して補助療法として用いられています。週に5日間連続で、約4〜5週間ほどの期間にわたり照射します。外来通院しながら治療することも可能です。最近では、より狭い範囲で腫瘍の部分を集中的に短期間で照射する方法も可能となってきています。
副作用はほとんどありませんが、耳の前の部分の頭髪がぬけ、再び生えてくる場合と生えてこない場合とがあります。治療後、多くの場合はホルモン補充療法が必要になります。放射線の効果は比較的長期間持続し、数年間にわたり効いていると考えられています。
3)化学療法
腺腫が異常に分泌しているホルモンの産生を抑制する治療です。ホルモン産生型の腺腫に対しての化学療法には著効を示すものもありますが、あまり有効でないものもあります。現在最も確実な治療効果を得られるものとしては、プロラクチン産生腺腫に対して使用されているブロモクリプチン(商品名:パーロデル)があります。この薬は、プロラクチン産生腫瘍の大半と成長ホルモン産生腫瘍の1/3に効果が認められ、血中のホルモン値が減少するばかりでなく、特にプロラクチン産生腺腫では腫瘍の縮小効果も期待されます。したがって、これらの腫瘍では腫瘍が小さい場合や残存腫瘍がある場合に、放射線療法を行わずにブロモクリプチン療法が行われています。ブロモクリプチンの服用には重篤な副作用はありませんが、服用開始時に吐き気や立ちくらみ、便秘などの症状がみられることがあります。
4)ホルモン補充療法
不可欠なホルモンについては、欠乏の程度によっては補充療法が必要です。副腎皮質ホルモンと甲状腺ホルモンは内服薬で補います。抗利尿ホルモンは鼻に吹きつける薬があります。成長ホルモンと性腺刺激ホルモンについては状況に応じて補充します。
5.各腺腫における治療方針のまとめ
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1.ホルモン非分泌性腺腫
手術+「放射線療法」
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2.プロラクチン産生腺腫
手術+ブロモクリプチン療法+「放射線療法」
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3.成長ホルモン産生腺腫手術+放射線療法+「ブロモクリプチン療法」
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4.副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫
手術+「放射線療法」
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5. 再発下垂体腺腫
腫瘍の種類、過去の治療、全身状態などから以上に述べた治療法(併用療法も含め)が試みられます。
6.生存率
経鼻的手術の合併症としては、術後の鼻出血と髄液鼻漏(ずいえきびろう:脳をうるおしている脳脊髄液が手術部より漏れる)があり、それぞれ1%程度です。開頭手術の合併症は他疾患による開頭手術と変わりありません。放射線照射の合併症としては、残されていた正常の下垂体の機能低下があり、根治を期待して照射線量を増せば汎下垂体機能低下をきたす確率は高まります。
下垂体腺腫全体としての10年生存率は、ほぼ100%と生命予後は良好です。ただし、種類を問わず腺腫自体が3〜4cmと巨大なもの、成長ホルモンないし副腎皮質刺激ホルモン分泌性腫瘍(つまり末端肥大症ないしクッシング病)で治療後もホルモン値が正常化しなかったものについては、病気そのものの合併症により不自由な生活を強いられることが少なくありません。
7.退院後の生活
正常の下垂体ホルモンが低下している場合、ホルモンの補充療法が必要になります。副腎皮質ホルモンと甲状腺ホルモンを補うことが必要で、それぞれの製剤を内服する場合があります。化学療法を継続する場合は月に1回の外来通院が必要です。また、年に1回くらいMRIかCTを行って、腫瘍の増大や再発の有無を確認することが必要です。 |
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