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| 慢性リンパ性白血病(成人)まんせいりんぱせいはっけつびょう(せいじん) |
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1.慢性リンパ性白血病とは
慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia:CLL)は、一般的に「血液のがん」といわれる白血病のひとつです。白血病にはいくつかの種類がありますが、細胞の種類から骨髄性とリンパ性とに分けられます。また、未熟なリンパ球が増加する場合と成熟したリンパ球が増加する場合とで、急性リンパ性白血病と慢性リンパ性白血病とに分けられます。これらは骨髄やリンパ系組織の中で発症します(血液細胞の種類、骨髄やリンパ系組織のことについては「慢性骨髄性白血病(成人)」、「急性リンパ性白血病(成人)」の項を参照して下さい)。通常、血液の中に成熟したリンパ球が著しく増加した状態が慢性リンパ性白血病です。リンパ球の種類により、B細胞とT細胞とに分けられます。白血病細胞は、リンパ節、骨髄、脾臓などで非常にゆっくり増殖し蓄積します。
慢性リンパ性白血病は、小児には少なく、成人でも中年以降に好発します。頻度は年間、10万人に1〜3人の発症率です。リンパ球のがんには、悪性リンパ腫や他の白血病がありますが、これらとは病態や治療法が異なります。
慢性リンパ性白血病の原因はまだ明確ではありません。そのため、危険因子や予防方法も明らかではありません。
2.症状
慢性リンパ性白血病の細胞は、骨髄、リンパ節、末梢血の中で増殖しますが、細胞の増加による直接の症状はあまりみられません。しかし、一般的には白血病細胞が増殖することにより、リンパ節や脾臓、肝臓がはれてきます。T細胞性白血病の場合には、皮膚や中枢神経に転移しやすい傾向があります。また、骨髄の中で白血病細胞が著しく増加した場合には、正常な血液が造られず、貧血や血小板減少による出血傾向などの症状がおこることがあります。また、リンパ系の細胞の異常や免疫力の低下などにより、細菌やウイルスに対する抵抗力がなくなり、発熱や肺炎、帯状疱疹(たいじょうほうしん:水疱を伴った発疹が出現し、痛みを伴うことが多く、ヘルペスとも呼ばれる)などの日和見感染の症状が認められることがあります。白血病細胞の増殖により体重減少、全身倦怠感、発熱、寝汗などの症状がみられることもあります。合併症として免疫の異常による溶血性貧血や、赤血球だけが少なくなる赤芽球癆(せきがきゅうろう)といった特殊な貧血、血小板減少がみられることもあります。
3.診断
慢性リンパ性白血病の発病の初期は無症状なので、最近では健康診断での血液検査などで見つかったり、ある程度進行してから全身の症状が少しずつ出現し発見されることもあります。他のがん同様、早期発見が望ましいのですが、難しいのが実情です。
原因がなく微熱やだるさが続いたり、身体のリンパ節がはれたり、肝臓や脾臓がはれたりしているような場合、まず血液検査を行います。これは血液細胞の内容と数を調べるためのものです
血液検査で異常が認められた場合には、骨髄の検査を行います。骨髄検査は、胸の胸骨や腰の骨である腸骨に細い針を刺して(骨髄穿刺:こつずいせんし)、骨髄液を吸引し、骨髄の中で増えている細胞が何であるかを調べるものです。白血病の場合には、細胞の免疫学的検査により細胞の種類(細胞表面のマーカーの違いによるT細胞性白血病、B細胞性白血病など)を検査します。さらに白血病細胞の染色体検査、がん遺伝子検査などを行います。いくつかの診断基準がありますが、一般血液検査で血液量1μl中にリンパ球が10,000個以上あり、それらが明らかに成熟したリンパ球である場合には、まず慢性リンパ性白血病が最も疑われます。ただし以下の疾患との鑑別が必要です。
- 1.急性リンパ性白血病
- 2.特殊なタイプの白血病(ヘアリー細胞白血病、前リンパ性白血病)
- 3.悪性リンパ腫の白血病化
- 4.成人T細胞性白血病
これらとは主に細胞表面のマーカーの違いにより、鑑別診断をつけます。
4.病期(ステージ)
慢性リンパ性白血病が見つかった場合(診断がついた場合)、より詳しい検査により病気の進行の程度、身体の中での拡がりの程度を調べます。これを病期分類といいます。いくつかの分類がありますが、中心になるのは症状、白血球の数、貧血の有無、リンパ節などがはれていることなどです。治療を計画的に受けるには、慢性リンパ性白血病のどの病期にあたるのかを知っておく必要があります。下記のような病期分類がよく使われます。
0期
血液中のリンパ球の数だけが多く、身体の症状や異常は全く認められません。肝臓、脾臓、リンパ節はまだはれてはおらず、赤血球数、血小板数は正常です。
I期
血液中のリンパ球の数が増加し、リンパ節がはれてきます。しかし肝臓、脾臓はまだはれてはおらず、赤血球数、血小板数も正常です。
II期
血液中のリンパ球の数だけが多く、肝臓、脾臓、リンパ節がはれてきている状態です。
III期
血液中のリンパ球の数が増えていて、貧血が出現しはじめている状態です。肝臓、脾臓、リンパ節がはれていることもあります。
IV期
血液中にリンパ球の数が増えていて、血小板数が減少しはじめている状態です。出血しやすい状態で、貧血が認められたり、貧血がおこりはじめている状態です。肝臓、脾臓、リンパ節がはれていることもあります。
治療不応状態
不応とは薬剤を投与して治療しても、白血病細胞が減少しない状態です。
5.治療
慢性リンパ性白血病の治療の主体は、抗がん剤を用いた化学療法です。この他に、放射線療法や造血幹細胞移植あるいはモノクローナル抗体による治療が行われることもあります。すでに確立されている標準的な治療方法がありますが、完全に治すことはなかなか難しいのが実情です。そのため、さまざまな新しい治療方法が試みられています。新しい薬の臨床試験や、造血幹細胞移植を併用した大量化学療法の臨床試験なども試みられています。以下のように病気そのものに対する治療、および病気に付随する合併症に対する治療があります。
1)化学療法
化学療法は、抗がん剤が血流に乗り、全身に運ばれて白血病細胞を殺すため、全身療法と考えられています。抗がん剤には、注射や点滴、飲み薬などいろいろな種類があります。わが国で使用される主な薬は、抗がん剤であるシクロフォスファミド、ビンクリスチン、フルダラビンなどです。抗がん剤による副作用は、主に白血球、赤血球と血小板の減少(血液毒性)と、これに伴った感染、発熱です。また、吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、そして便秘などの消化器症状もみられることがあります。これらの副作用に対しては、いろいろな予防法、対症治療が進歩し、安全に治療が受けられるようになりつつあります。
抗がん剤以外では、生物製剤があります。生物製剤とは、すでに身体の中にある活性物質を実験的に合成し、自分の身体の抵抗力を増すような形で使われるもので、現在悪性度が低いB細胞悪性リンパ腫の治療に承認されたモノクローナル抗体治療も使用可能となりました。
2)放射線療法
多くの場合、慢性リンパ性白血病が原因で大きくなった脾臓や、リンパ節、腫瘤(しゅりゅう)などによる圧迫症状を緩和するため照射します。これは局所治療であり、対症治療のひとつです。
3)造血幹細胞移植療法
白血病に侵された骨髄を健康な骨髄に置き換える治療法です。大量の抗がん剤や放射線照射により、骨髄細胞をなくしてしまいますので、白血球の型が完全に一致した兄弟の健康な造血幹細胞をもらい移植します。これは同種移植と呼ばれます。全身状態が良好で臓器機能が正常であれば、50歳までは施行可能とされています。
4)血液成分採血
対症療法のひとつとして、血液中に増加しすぎたリンパ球を除去する治療が行われることもあります。これは成分献血の際に用いられる採血装置を使用して、血液の成分を分離し、リンパ球の多い成分を除いて他のものを身体に戻す治療です。
5)合併症の治療
感染予防のために免疫グロブリン製剤を使用する場合もあります。これにはウイルス感染を防ぐ抗体が含まれています。また、感染に対しては抗生物質の投与などが行われます。自分の免疫の異常でおこる溶血性貧血などに対しては、免疫の異常を抑える目的でステロイドホルモン剤などの薬が使われることもあります。
6.各病期(ステージ)別治療
慢性リンパ性白血病の予後(治療による今後の見通し)は、B細胞性白血病であるかT細胞性白血病であるかなどの種類や白血病がどこまで拡がっているのか、また細胞の染色体に異常があるかどうか、さらに年齢や全身の状態により異なります。一般的には、T細胞の慢性リンパ性白血病の予後は悪いとされています。現状では、たとえ慢性リンパ性白血病に対する標準的治療を行っていても、完全治癒に結びつくとは限りません。
0期
リンパ球数が非常に多い場合には、それを減らすために抗がん剤を使うこともあります。白血病の症状が悪化する前に治療が開始できるように、定期的な診察と検査を受けることが大切です。
I期
次のような選択肢があります。
- 身体の症状や異常が全く認められない場合には、治療の必要がないこともあります。この場合には、白血病による症状が悪化する前に治療が開始できるように、定期的な診察と検査を受ける必要があります。
- リンパ節がはれてきた場合には、そこに放射線療法を行うこともあります。
- 化学療法は、多くの場合、シクロフォスファミドおよびビンクリスチンという抗がん剤を使います。数ヶ月の治療後、症状が改善されればいったん治療は中止します。
II期
次のような選択肢があります。
- 身体の症状や異常がほとんど認められない場合には、治療の必要がないこともあります。この場合には、白血病が悪化しないうちにすぐ治療が開始できるように、定期的な診察と検査を受ける必要があります。
- 化学療法は、多くの場合、シクロフォスファミドおよびビンクリスチンという抗がん剤を使います。数ヶ月の治療後、症状が改善されればいったん治療は中止します。
- 生物製剤による治療も行われています。これらは自分の身体の抵抗力・免疫力を増すような形で使われます。
- 脾臓がはれてきた場合には、脾臓に放射線療法を行うこともあります。
III期ないしIV期
次のような選択肢があります。
- シクロフォスファミドおよびビンクリスチンという抗がん剤による化学療法を受けるか、あるいはこれが無効の場合、フルダラビンの化学療法を受けます。数ヶ月の治療後、症状が改善し、1ヶ月以上安定した状態が続けばいったん治療は中止します。
- 新しく承認されたリツキサンというモノクローナル抗体による免疫療法も行われています。
- 同種造血幹細胞移植を用いた大量の抗がん剤による治療も行われています。
- 脾臓がはれてきた場合には、脾臓だけを切除したり、脾臓に放射線療法を行うこともあります。
治療不応状態
標準的治療を受けていても、予想に反して治療効果が十分に達成できないこともあります。病気が残り、しかも薬が効かない状態を治療不応といいます。ただし、病気の進行が遅いこともあり、常に合併症に注意することが大切です。この時期には標準的治療の効果があまり期待できないために、新しい抗がん剤、または骨髄移植の臨床試験が行われています。臨床試験に参加することは、個人の意思によります。治療の副作用と効果、および身体の状態をよく理解した上で、新しい薬剤や骨髄移植などの臨床試験に参加するかどうか判断することが大切です。
7.寛解率、および生存率
未治療の場合、全体の生存率は5年が60〜80%、10年が20〜30%、20年が10%ですが、病期により差があります。化学療法を受けた場合には、白血球数が低下し正常化し、症状もいったんは軽快消失し、寛解状態に到達します。しかし、寛解状態に到達しても必ずしも治癒には結びつきません。再発、ないし治療抵抗性となる場合が多くみられます。各病期別のおよその(完全ないし部分)寛解率と生存率を以下に記します。
| 病期 |
寛解率
(完全寛解率) |
5年生存率 |
10年生存率 |
20年生存率 |
| 0期 |
80(30)% |
80〜90% |
50〜70% |
20〜30% |
| I期 |
80(30)% |
70〜80% |
20〜30% |
10〜20% |
| II期 |
60(30)% |
50〜60% |
20〜30% |
10%以下 |
| III期 |
60(5)% |
40〜60% |
20%以下 |
10%以下 |
| IV期 |
50(5)% |
40〜60% |
20%以下 |
10%以下 |
治療不応状態の場合には、寛解に達することは期待されず病気が進行し、平均生存期間は約14ヶ月とされます。
病期別の治療成績、予後の改善は、この30年間ほとんど認められていません。近年の多剤併用化学療法は、アルキル化剤単剤の治療を上回るものではありません。ただし、現在臨床試験が行われている新しい抗がん剤、あるいは造血幹細胞移植などの新しい治療方法により、将来治療成績がより改善してくることは十分期待できます。
8.外来治療の際に注意すべきこと
慢性リンパ性白血病の治療の主体は、外来治療です。外来で化学療法を受ける場合もあります。外来治療の際には、以下のことに注意して下さい。
- 化学療法を受けている最中に高い熱が出た場合には要注意です。担当医より抗生物質が出されている場合には、指示通り服用して下さい。注射による抗生物質が必要になることもありますので、ぐあいの悪い時には、担当医、または通院している病院に電話連絡をして下さい。
- 病気や治療により、感染に対する抵抗力が低下します。このため、帯状疱疹や、他のウイルス疾患を合併しやすくなります。このような場合にも、早く抗ウイルス剤による治療を開始することにより、重症化を防ぐことができます。担当医に連絡するか、皮膚科の医師の診察を受けて下さい。
- 慢性リンパ性白血病は治療が順調に進んでいても、長く同じような状態が続く病気です。できるだけ仕事や家事を続けながら外来治療を受け、通常の社会生活を送ることを勧めます。
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