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 1.成人T細胞白血病リンパ腫とは
 2.症状
 3.診断
 4.病型
  1. 急性型
  2. リンパ腫型
  3. 慢性型
  4. くすぶり型
  5. 急性転化型
 6.治療

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成人T細胞白血病リンパ腫せいじんてぃーさいぼうはっけつびょうりんぱしゅ

1.成人T細胞白血病リンパ腫とは

成人T細胞白血病リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL)は、リンパ系の悪性腫瘍である非ホジキンリンパ腫の特殊なタイプです。

血液細胞は白血球と赤血球、血小板に分けられ、白血球はさらにリンパ球、好中球などに分けられます。血液細胞は骨髄で造られています。骨髄とは骨の中にあるスポンジ状の組織です。骨髄の中で造られた血液細胞は血液の中に出て、それぞれの役割をはたします。白血球は細菌やウイルスなどと戦い、赤血球は全身に酸素を運び、血小板は血を止める働きをしています。

リンパ系は、全身に広がる血管のような細い管であるリンパ管と、リンパ管に介在するリンパ節で成り立っています。リンパ管には、リンパ球を含んだ透明のリンパ液が流れています。リンパ節は小さな豆のような形をした器官で、やはり全身に分布していますが、特にわきの下、頸部、鼠径部(そけいぶ:足のつけ根)、腹部、骨盤部に集まっています。脾臓(左上腹部にある臓器)や胸腺(胸骨の裏側にある組織)と扁桃(のどの奥にある組織)もリンパ系の一部です。

リンパ球はリンパ系組織、血液、骨髄の中にあり、細菌やウイルスなどの感染と戦っています。リンパ球は、機能の違いからT細胞、B細胞、ナチュラルキラ−細胞(NK細胞)に分けられます。成人T細胞白血病リンパ腫は、T細胞が悪性化して、リンパ節や血液の中で異常に増加し、骨髄や肝臓、脾臓、消化管、肺など全身の臓器に拡がっていくものです。

成人T細胞白血病リンパ腫は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(human T-cell leukemia virus type I:HTLV-I)の感染により引きおこされることが明らかになっています。HTLV-Iに感染している人は、日本全国で約120万人(人口の約1%)と推定されており、九州、沖縄など南西日本に多いことが知られています。成人T細胞白血病リンパ腫を発症するのは、HTLV-I感染者10,000人について年間6人あまりで、大部分の方はHTLV-Iに感染していても成人T細胞白血病リンパ腫を発症しないことになります。なぜHTLV-Iに感染している人が成人T細胞白血病リンパ腫を発症するのか、なぜHTLV-Iに感染している人でも成人T細胞白血病リンパ腫を発症する場合としない場合があるのかについては研究が進められていますが、まだ十分に解明されていません。

HTLV-Iの感染の経路は、1)母児間の母乳を介しての感染、2)夫婦間の(特に夫から妻への)性交渉での感染、3)輸血による感染の3つがあります。

母児間の感染は、母親がHTLV-Iに感染している場合、子供の20〜30%に感染がおこっており、母乳の中に含まれるHTLV-Iに感染したリンパ球が、その主な原因だと考えられています。母親がHTLV-Iに感染している場合、授乳を中止することにより子供への感染をほぼ防止できることが確かめられています。

夫婦間感染では、主に夫から妻へ、精液中のHTLV-Iに感染したリンパ球を介して感染すると推定されています。しかし、夫婦間感染によってHTLV-Iに感染した場合は、成人T細胞白血病リンパ腫を発症することは極めてまれであるため、今のところ夫婦間感染に対する特別な対策は立てられていません。

輸血による感染は、1986年から全国の血液センタ−で献血時にHTLV-I抗体のチェックがなされており、現在輸血による感染の心配はありません。

このようにHTLV-Iの感染経路は限定されているので、日常生活で感染することはなく、成人T細胞白血病リンパ腫の方やHTLV-Iのキャリアが、隔離されたり生活の制限を受ける必要は全くありません。

成人T細胞白血病リンパ腫は、ほとんどが40歳以上の方で、60〜70歳に最も多く発症します。

2.症状

頸部、わきの下、足のつけ根などのリンパ節がはれます。また、肝臓や脾臓がはれることもあります。細菌やウイルスに対する抵抗力が低下して、肺炎などの感染症をおこして熱が出ることがあります。骨髄に拡がった場合には、正常な赤血球や血小板が造られなくなります。このため動悸、息切れなどの貧血の症状や、鼻血、歯肉出血などの出血症状がみられることがありますが、他の白血病と違ってあまり多くありません。悪性化したリンパ球が皮膚に拡がった場合は、原因不明の皮疹がおこることがよくあります。

また、血液中のカルシウム値の上昇もよくみられます。これは悪性化したリンパ球がカルシウム値を上昇させる物質を産生するためにおこります。血液中のカルシウム値が高くなると、食欲が低下したり、吐き気やのどの乾きを感じたり、呼びかけに対して反応が鈍くなったり、意識を失ったりするなどの症状がみられます。その他、悪性化したリンパ球は中枢神経と呼ばれる脊髄や脳にも浸潤(しんじゅん:がんが周囲に拡がること)することがあり、頭痛や吐き気が認められることがあります。

3.診断

疲れやすい、熱が続く、リンパ節がはれる、塗り薬でよくならない皮疹などの症状が続く場合は、血液内科の専門医のいる病院を受診して検査を受けて下さい。血液の悪性腫瘍が疑われた場合、まず血液検査が行われます。血液検査は血液細胞の数や内容を調べるものです。成人T細胞白血病リンパ腫では、花びらの形をした核をもつ異常なリンパ球の出現が特徴的です。また血液検査では、HTLV-Iに感染して抗体があるかどうかも調べます。リンパ節がはれている場合には、リンパ節生検が行われます。これは局所麻酔による小切開でリンパ節をとり出し、顕微鏡で悪性細胞の有無を調べる検査です。最終的に成人T細胞白血病リンパ腫の診断を確定するためには、血液やリンパ節の悪性細胞の中に入り込んだウイルス遺伝子の検査を行う場合があります。

成人T細胞白血病リンパ腫と診断された後、病気の拡がりを調べるために全身の検査が行われます。目に見えない腹部や骨盤部のリンパ節がはれてないか、肝臓や脾臓に浸潤していないかを調べるために腹部CTや腹部超音波検査を行います。胃や十二指腸に浸潤していないかどうかをみるためには、胃内視鏡検査やX線検査が必要です。また、縦隔(じゅうかく:左の肺と右の肺の間の胸の正中部分のこと)の周りのリンパ節のはれや、肺へ病気がおよんでいないかどうかを調べるため胸部X線検査や胸部CTが行われます。骨髄に浸潤していないかどうか調べるために骨髄穿刺も行われます。骨髄穿刺は、局所麻酔後、胸骨または腸骨(腰の骨)に細い針を刺して骨髄液を吸引し、顕微鏡で観察します。その他、中枢神経(脳や脊髄)への浸潤を調べるために、局所麻酔後に腰の部分の背骨の間から針を刺して少量の脳脊髄液を採取する場合があります。

4.病型

成人T細胞白血病リンパ腫は、多彩な症状、臨床経過をとることが知られていますが、一般に次の5つの病型に分類されます。

1)急性型

血液中に花びらの形をした核をもつ異常リンパ球が出現し、急速に増えていくものです。リンパ節のはれや、皮疹、肝臓・脾臓の腫大を伴うことも多くみられます。消化管や肺に異常リンパ球が浸潤する場合もあります。感染症や血液中のカルシウム値の上昇がみられることもあり、抗がん剤による早急な治療を必要とします。

2)リンパ腫型

悪性化したリンパ球が主にリンパ節で増殖し、血液中に異常細胞が認められない型です。急性型と同様に急速に症状が出現するために、早急に抗がん剤による治療を開始する必要があります。

3)慢性型

血液中の白血球数が増加し、多数の異常リンパ球が出現しますが、その増殖は速くなく、症状をほとんど伴いません。無治療で経過を観察することが一般的に行われています。

4)くすぶり型

白血球数は正常ですが、血液中に異常リンパ球が存在する型で、皮疹を伴うことがあります。多くの場合、無治療で長期間変わらず経過することが多いため、数ヶ月に1回程度の外来受診で経過観察が行われます。

5)急性転化型

慢性型やくすぶり型から、急性型やリンパ腫型へ病状が進む場合を急性転化型と呼ぶことがあります。この場合には、急性型やリンパ腫型と同様に、早急に治療を開始する必要があります。慢性型やくすぶり型が急性転化をおこす頻度と最初の診断から急性転化までの期間は、まだ十分に解明されていませんが、慢性型では2〜5年程度、くすぶり型ではさらに長い期間を要すると考えられています。この他、リンパ腫型から急性型へ変化することもしばしば経験されます。

血液中のHTLV-I抗体が陽性ですが、症状も検査値異常も全く認められない場合をHTLV-Iキャリアと呼びます。本人の希望がある場合を除いて、HTLV-Iキャリアでは、定期的な観察は必要ではありません。

5.治療

成人T細胞白血病リンパ腫の治療として一般に行われているのは、抗がん剤を用いた化学療法です。抗がん剤は静脈注射や飲み薬などいろいろな種類があり、血管の流れによって全身に運ばれて悪性化したリンパ球を殺すため、全身療法といわれています。また、髄腔内注射といって、腰の正中部より細い針で抗がん剤を髄液内に入れます。

成人T細胞白血病リンパ腫に対する抗がん剤(急性型、リンパ腫型と急性転化型が対象になります)は、通常、非ホジキンリンパ腫に有効な抗がん剤(ビンクリスチン、エンドキサン、アドリアマイシン、メソトレキセ−ト、エトポシドなど)が用いられます。これらの抗がん剤の併用療法によって、30〜70%の場合で寛解(悪性細胞がかなり減少して、検査値異常が改善した状態)が得られますが、最終的な治癒が期待できるのは残念ながらごく一部にとどまっています。

抗がん剤には、正常な白血球や血小板の減少、吐き気、脱毛、口内炎、肝臓や腎臓、肺、心臓、神経系などに対して副作用を生じる場合があり、重症の肺炎などの重大な合併症をおこした場合には、死亡につながる場合があります。担当医から、抗がん剤による化学療法について説明を受ける場合は、期待される治療効果だけではなく、抗がん剤の副作用についても十分な説明を受けた上で、抗がん剤治療を受けるかどうかを判断して下さい。

成人T細胞白血病リンパ腫は治療が難しい病気ですが、よりよい治療法を開発するために臨床試験が行われています。研究段階の治療法の中で、現在最も期待されているのは同種造血幹細胞移植です。化学療法により病気がある程度コントロールされている、感染症を合併していない、全身状態がよい、50歳以下である、白血球の型(HLAといいます)が合っているドナーがいるなどの条件を満たす場合は、検討する価値のある治療法です。また、ミニ移植といって、造血幹細胞移植の前の処置を軽くすることにより、50歳以上の高齢者にも適用可能な同種造血幹細胞移植法も検討されています。

研究段階の治療法については、その治療法の内容、期待される効果、おこりうる副作用について、十分な説明を担当医に求めて下さい。その上で、臨床試験に参加するかどうかを判断して下さい。

治療選択、特に臨床試験に参加するかどうかの判断に迷われる場合は、他の専門医によるセカンドオピニオンを求めることをお勧めします。

成人T細胞白血病リンパ腫は、通常の非ホジキンリンパ腫に比べ、ウイルス感染症、カビによる感染症、カリニ原虫による肺炎、糞線虫症など、健康な人にはほとんどみられない特殊な感染症(これを日和見感染症といいます)がおこりやすいことが知られています。微熱が続いたり、咳や息切れ、下痢などの症状があった場合には、担当医に相談して、適切な治療を受けて下さい。
情報掲載内容について
情報提供:国立がんセンター 情報委員会
URL 〔 http://www.ncc.go.jp/jp/index.html 〕
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