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| ホジキン病(成人)ほじきんびょう(せいじん) |
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1.ホジキン病とは
リンパ組織を構成している細胞が、がん化(悪性化)してできた悪性腫瘍を悪性リンパ腫といいます。悪性リンパ腫は、ホジキン病と非ホジキンリンパ腫に大別され、それぞれにつき病変部の腫瘍細胞の形状やその配列状態の違いなど、いわゆる病理組織学的所見に基づいて病型分類がなされています。
リンパ組織は、血管と同じように枝別れするリンパ管により、身体のあらゆる部分に張りめぐらされています。リンパ管には白血球の一種であるリンパ球を含んだ無色の体液(リンパ液)が流れています。リンパ管にそってリンパ節と呼ばれる豆の形をした組織が集団をつくっています。リンパ節は、感染症と戦う細胞をつくったり蓄えたりしています。リンパ節は頸部、腋窩(えきか:わきの下)、肺門(肺の入口)、縦隔(じゅうかく:両肺の間)、腹部大動脈周囲、骨盤内および鼠径部(足のつけ根の内側)などに多くみられます。リンパ節ではありませんが、脾臓(リンパ球をつくったり、老化した赤血球を除去している左上腹部にある臓器)、胸腺(胸骨の下にある小さな組織)、扁桃および腸管のリンパろ胞(粘膜下のリンパ球の集団)はリンパ組織の一種で、ここからホジキン病が発生することもあります。
このように、リンパ組織は身体のいたるところにあるためにホジキン病はどこからでも発症することがあり、肝臓、骨髄(大きな骨の中にある海綿状の組織で血液を造っている)、および脾臓など身体のいたるところに拡がる可能性があります。
成人のホジキン病は、20歳代と60歳代の人に比較的多く発症します。ホジキン病は小児でも発症しますが、治療法は成人の治療法とは少し異なっています。
2.症状
他のがんと同様に、ホジキン病も一般に早期発見(診断)により、よりよい治療成績が得られます。症状としては、痛みのないリンパ節のはれ(腫脹:しゅちょう)が特徴的とされていますが、痛みを伴うこともあります。これらのリンパ節腫脹は頸部、腋窩および鼠径部などによくみられます。発熱、寝汗、疲れやすさ、体重減少および皮膚のかゆみなど全身的な症状がリンパ節腫脹と同じ時期か、腫脹以前にみられることがあります。2週間以上にわたる痛みのないリンパ節腫脹や、上記の全身症状がある場合には医師の診察を受けることが必要です。
3.診断
先に述べた症状がある場合、頸部、腋窩および鼠径部(そけいぶ:足のつけ根)などのリンパ節の腫脹の有無を注意深く診察します。リンパ節腫脹を認めた場合には、小手術でそのリンパ節をとり出し病理検査を行います。この検査はリンパ節生検と呼ばれています。
4.病期(ステージ)
ホジキン病と診断された場合には、病気がどのように拡がっているかを検査します。これは病期診断と呼ばれています。ホジキン病の病期は病気の拡がりの程度によってI期からIV期までの4段階に分けられます。ホジキン病の予後や治療法は、病期により異なっているために病期を診断することが重要です。
病期の診断は、触診や血液検査、種々のX線検査、超音波検査さらにはMRI検査などにより行われます。これらの検査により診断された病期は、臨床病期と呼ばれています。
場合により、病期をより正確に診断するために開腹生検と呼ばれる手術を行うことがあります。この開腹手術では腹腔内の臓器に腫瘍細胞の浸潤(しんじゅん:がんが周囲に拡がること)がないかを注意深く観察します。また、その一部を切除して顕微鏡下で観察し、腫瘍細胞の浸潤の有無を調べます。このようにして決定された病期は、臨床病期に対して病理学的病期と呼ばれています。一般に開腹生検は治療法を決める上で、厳密な病期の決定が不可欠と思われる一部の限られた場合に対してのみ行われます。
臨床病期および病理学的病期のいずれも、全身症状随伴の有無により、さらにAとBの2つに分けられます。全身症状を伴っていない場合はA、伴っている場合はBとなります。全身症状とは、6ヶ月以内の10%以上の体重減少や、ホジキン病による発熱や多量の寝汗をさしています。例えば、全身症状のないI期の場合は病期IA期となり、全身症状を伴うI期の場合は病期IB期となります。
ホジキン病の病期は以下のとおりです。
I 期
病変がひとつのリンパ節領域、またはひとつのリンパ節以外の組織や臓器に限局的に認められる。
II期
以下のいずれかの場合
- 病変が2つ以上のリンパ節領域に拡がっているが、横隔膜(肺の下方にある薄い筋肉で呼吸を助けている)を境としてその同側にとどまっている。
- 病変がリンパ節以外の組織や臓器に限局的に認められ、かつ横隔膜を境として同側のリンパ節領域にも病変が認められる。
III期
病変が横隔膜を境として上下両側のリンパ節領域に認められる。病変が近接する部位や臓器または脾臓に拡がっている場合も含む。
IV期
以下のいずれかの場合
- 病変がリンパ組織以外の臓器にびまん性ないし多発性にみられる。病変はそれらの臓器の周囲にあるリンパ節にみられることもある。
- 病変がリンパ組織以外のたったひとつの臓器にしかなくても離れた場所のリンパ節への転移を伴う。
5.治療
治療法には放射線療法と化学療法の2つがあります。
1)放射線療法
放射線療法は、腫瘍細胞を殺したり縮小させたりするのに高エネルギーのX線を用います。通常、ホジキン病で行われる放射線療法は外照射法と呼ばれるもので、身体の外から病巣部に放射線を照射します。放射線照射の範囲(照射野)にはそれぞれ名称があり、頸部、腋窩、肺門および縦隔リンパ節への照射は「マントル照射」と呼ばれています。また、マントル照射に脾臓と上腹部および骨盤内リンパ節への照射を加えたものは、「全リンパ節照射」と呼ばれています。放射線療法は、治療効果を高めるために化学療法と併用して用いられることもあります。
化学療法は抗がん剤の内服や、静脈または筋肉内への注射によって投与します。放射線療法が放射線を照射した場所だけにしか効果がみられない局所療法であるのに対し、化学療法は抗がん剤が血流に乗り全身に広がり腫瘍細胞を殺すので全身療法と呼ばれます。
3)骨髄移植
ホジキン病は、ときに放射線療法や化学療法が効かなくなることがあります。そのような場合に、超大量の抗がん剤を用いた化学療法が、放射線療法とともに骨髄移植を併用して行われることがあります。治療によって骨髄における造血機能(血液を造る働き)が破壊されてしまうので、あらかじめ(治療の前に)自分の骨髄を採取し凍結保存しておき、大量の化学療法や放射線療法を行った後で(破壊された骨髄機能を補うため)、凍結保存された骨髄を解凍して静脈内に投与します。このような骨髄移植は「自家骨髄移植」と呼ばれます。なお移植する骨髄を他の人からもらう方法もあり、これは「同種骨髄移植」と呼ばれます。最近では、別の種類の自家移植法として末梢血幹細胞移植が開発され、骨髄移植にとってかわりつつあります。この方法では患者さんの血液を機械に通すことによって、末梢血液中から幹細胞(すべての血液細胞のもとになる若い細胞)をとり出し、残りの血液は患者さんへと戻されます。この末梢血幹細胞採取法は、通常3〜4時間かかります。末梢血幹細胞は骨髄と同様に凍結保存され、治療時に解凍されて身体に戻されます。
6.病期(ステージ)別治療
病気が治癒する可能性(予後)や治療法は病期、腫脹しているリンパ節の大きさ、血液検査の結果、症状の種類、年齢、性別、さらに全身状態によって異なります。
有効性が認められている標準的な治療法を受けることもできますし、また研究的な臨床試験を選択することもできます。すべてが治癒するのは難しく、標準的な治療法でも予想以上の副作用が出現することがあります。治療後5年から15年の間に治療の副作用として白血病などの悪性腫瘍を発症することもあるからです。そのため、治療終了後も定期的に医師の診察を受ける必要があります。また、最新の情報に基づいて、よりよい治療をみつけるために臨床試験が行われています。
I期
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IA期
- 1. 病変が横隔膜より頭側にあり縦隔に巨大腫瘤がない場合、以下の治療法のいずれかとなります。
- (1) 化学療法と放射線療法の併用療法
- (2) マントル照射のみ(病理学的IA期の場合)
- (3) マントル照射と、上腹部のリンパ節への放射線療法
- (4) 化学療法単独
- 2. 病変が横隔膜より頭側にあり、縦隔に巨大腫瘤がある場合
- (1) マントル照射と化学療法の併用
- (2) マントル照射と上腹部のリンパ節への放射線療法
- 3. 病変が横隔膜より腹側にある場合
- (1) 放射線療法
- (2) 放射線療法と化学療法の併用療法
- (3) 化学療法単独
-
IB期
- 治療法は以下のいずれかとなります。
1. 放射線療法と化学療法の併用療法 2. 化学療法単独
II期
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IIA期
- 1. 病変が横隔膜より頭側にあり、縦隔に巨大腫瘤がない場合
- (1) 化学療法と放射線療法の併用療法
- (2) マントル照射のみ(病理学的IIA期の場合)
- (3) マントル照射と上腹部のリンパ節への放射線療法
- (4) 化学療法単独
- 2. 病変が横隔膜より頭側にあり、縦隔に巨大腫瘤がある場合
- マントル照射と化学療法の併用療法
- 3. 病変が横隔膜より下にある場合
- 化学療法単独か、化学療法と放射線療法の併用療法
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IIB期
- 1. 化学療法単独か、化学療法と放射線療法の併用療法
III期
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IIIA期
- 1. 縦隔に巨大腫瘤がない場合
- (1) 化学療法単独
- (2) 化学療法と放射線療法の併用療法
- 2. 縦隔に巨大腫瘤がある場合
- 化学療法と放射線療法の併用療法
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IIIB期
- 治療法は以下のいずれかとなります。
- 1. 化学療法単独
- 2. 化学療法と、放射線療法の併用療法
IV期
治療法は以下のいずれかとなります。
1. 化学療法 2. 化学療法と放射線療法の併用療法
3. 骨髄移植/末梢血幹細胞移植を併用した超大量の化学療法の臨床試験
再発
最初に病変があった場所におこることもありますし、それ以外の場所におこることもあります。
治療法は再発の部位とすでに受けた治療法により異なります。
- 以前、化学療法を受けていない場合
化学療法
- 以前、放射線療法を受けていない場合
再発部位がリンパ節のみの場合には、放射線療法単独、または放射線療法と化学療法の併用療法
- 2ヶ所以上に再発した場合
通常の化学療法または骨髄移植/末梢血幹細胞移植を併用した超大量の化学療法など研究的な治療法
7.治療の副作用
1)放射線療法
放射線療法は、照射野が小さい場合にはあまり大きな障害がみられませんが、照射野が大きい場合は骨髄の障害などの強い副作用がみられることがあります。骨髄の障害は放射線療法により血液の産生が障害されるためにおこります。このため白血球が減少し感染症にかかりややすくなったり、血小板の減少により出血しやすくなったりすることがあります。頭頸部への放射線照射では、口内炎や唾液腺の障害、味覚障害が生ずることがあります。化学療法と併用した場合、副作用がより強くあらわれることもありますし、また、二次的な白血病などの悪性腫瘍が発生しやすくなることも報告されています。
2)化学療法
化学療法は全身療法であるため、身体のすべての臓器に障害が出現する可能性があります。一般的に抗がん剤の投与時には、吐き気や嘔吐、便秘および下痢などの消化器症状、全身倦怠感が出現します。投与後しばらくして口内炎などの粘膜障害や脱毛、造血機能の障害や、それに伴う、感染症が出現することがあります。また、放射線療法と併用した場合にはこれらの副作用がより強くあらわれることもあり、二次的な白血病などの悪性腫瘍の発症の可能性も高くなります。不妊症になる場合もあります。
3)副作用の対策
放射線療法や化学療法によりおこる副作用に対しては、その症状の軽減を目的として可能な限りの治療が行われます。現在では吐き気止めの薬、減少した白血球の回復を促進する薬剤や、感染症に対する抗生物質などが開発されており、苦痛が少なく、比較的安全に治療が行えるようになっています。
8.治癒率
欧米の報告では、I期で90%以上、II期で80〜90%、III期で50〜90%、IV期で40〜65%が治癒し、全体として新しく診断された約75%は治癒可能といわれています。わが国の治療成績もほぼ同等と考えられています。 |
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